補講第5回 「CG枚数が少ない時の感動的シナリオの書き方」
 

続いての質問は、砂沢さんです! みなさん、拍手を!
では、早速質問行ってみよう!

今、私はゲームを作る計画をたてているのですが、仕事の都合で時間がとれない
ため、CG枚数は30枚〜35枚の間を限度として(背景別)シナリオを書くようCG担
当から釘を刺されています。
深みのある話を書くには、一人頭最低CG六枚以下では浅くなる、というお話を読み
「ぐわあああ、足りない足りない足りないーー」と焦っております。話を動かす最低
限のキャラクターに絞って、立ち絵のバリエーションも最低限にとどめたのですが、
それでも枚数は22枚が限度でした(キャラクターは3人)。
そこで、もしできることなら、
◎CG枚数を増やせない時に、それでも浅いシナリオにしないためには全体として、
どこを工夫したらいいのか。
また、
◎立ち絵グラフィックしか使えない時に、手抜きに見えない印象的なシーンを作成す
るためには、どのようなことに注意したらいいのか。
そして、
◎1キャラクターでHシーンに一枚しか絵を使えない場合、画面と文章がばらばらにな
らないためにはどこにポイントを絞ればいいのか。
この三点について、ぜひともお教え願えないでしょうか。
よろしくお願いいたします。

 では、早速整理しよう。
 今回の質問は、
(1) CG枚数が少ない時に浅いシナリオにしないためには?
(2) 立ちポーズしか使わずに手抜きに見えない印象的なシーンを作るには?
(3) エッチシーンが1キャラクター1枚しかない時、画面と文章をばらばらにしないためには?
 これですね。なかなか難題揃いだ(笑)。


CG枚数が少ない時に浅いシナリオにしない方法

◆分岐を増やさないこと
 ──ムフフ、ぼくちんが答えを言おう。
 いやな予感。
 ──ぼくちんを出すこと。
 ばき〜〜〜っ!
 ──ぎょ、ぎょは〜〜っ! ね、年末なのにぃ……
 醜いものは殴るのがわたしの趣味なのだ。
 ──悪趣味……。
 何だと?
 ──何でもありません、閣下。
 コホン。
 さて、枚数が少ない時に一番初めにやることは、分岐を増やさないことだ。分岐を増やしてしまうと、CGもお話も分散してしまって締まりがなくなってしまう。
 ──なるほど、ぼくちんの腹のようになるわけだ。
 ええい、見せるなっ!
 思い切って一本道にするのも手だな。いたずらに分岐を増やして中途半端になるよりは、覚悟して一本道のアドベンチャーにしてしまった方がよい。
 ──なるほど。ぼくちんにも腹を見せる覚悟が必要なわけだ。
 先程見せたろうが!
 ──へへへ。
 真面目な話。シナリオの真ん中でダイナミックに分岐してしまうと、CGが少なすぎて内容をフォローできなくなっちまうのよ。土壇場で分岐するようにするか、思い切って一本道にした方が割り切りがよくていいお話になる。割り切れると、自分がユーザーに感じさせたいものに向かって突進できるから、さらにお話がよくなるのだよ。
 ──なるほど。
◆複数回使用できるCGを考えること
 ──複数回使用できる?
 何度もお話の中で使えるということだ。
 ──ああ、たらい回しができるって意味ね。
 そうだ。浅い話にしないためには、数回たらい回しができるイベントCGを考えることも重要だ。
 ──『プリズム・ハート』で言うメルとの抱擁CG、『Fresh!』での京香との抱擁CGだね。
 そうだ。
 ──じゃあ、ぼくちんのどアップのCGを……
 考えんでよい!
◆エンディングCGを必ず用意すること
 ──これは、どうして?
 あるのとないのとで、全然お話を終わった後の印象が違うのだ。『パンドラの夢』で最後のCGがなかったらどうだ? 文章だけであのラストに感涙できるか?
 ──むむむ。
 浅い話にしたくない場合は、なんとしてもエンディングCGは用意すること。
 ──ラジャー! では、ぼくちんとのらぶらぶなエンディング……
 用意せんでいい!
 ──じゃあ、ぼくちんとのでぶでぶなエンディング……
 そんなものあるか〜〜〜っ!
◆書きたいものをしっかり持って、書きたいものに向かって突進せよ
 ──これはどうして?
 貴様、いったい何を学んできた。
 ──脂肪のふるわせ方。
 拳骨と仲良くなりたいか?
 ──い、いえ、め、めっそうもない。
 なら、真剣に答えい。
 ──書きたいものをしっかり意識していないと、話に統一感がなくなっちゃうからでしょ?
 そうだ。
 ──でも、それって、シナリオ全般の問題じゃん。どうして「浅い話を書かないために」の話題で出てくるの?
 あのな。
 イベントCGが少ない話ってのは、小説でいえば短編みたいなものだ。
 何かのトーンで一色塗りしちゃった方がお話的にはよくなるわけよ。
 ──ふむふむ。
 そのトーンというのが、書きたいものなのよ。
 ──なるほど。短いから、普通にシナリオを書く時以上に、書きたいものを意識することが必要ってわけね。
 ずいぶんとものわかりがいいな。
 ──年末だから。
 ……


手抜きに見えない印象的なシーンの作り方

◆イベント神話を捨てよ
 これについてはまず一つ。
 イベント神話を捨ててほしい。
 ──イベント神話?
 イベント神話というのは、イベントが人を感動させてくれるのだ、という考えのことだ。
 イベントCGというのは、たいてい山場に現れるのよ。山場というと盛り上がりだから難しいように見えるが、シナリオ的には難しくない。
 ──でぶでも書ける。
 そこまでは言うとらん。でも、山場だけならアマチュアさんでもある程度は書けるだろう。
 ──書いている本人も、創作中に盛り上がっちゃって自ら泣いちゃったりして。
 そうそう。
 そこが危険なのだよ。
 自分は泣けるんだけど、いざ完成してみると、他人は泣いてくれない。なぜか。
 ──山場の書き方が悪いから。
 違う。そこが勘違いなのだよ。イベント神話だというのだ。
 ──?
 山場を見せられたぐらいでは、人は泣いてくれないのよ。山場で泣くためには、それまでの一連のつながり、プロセスがうまく書けていないと駄目なのよ。
 ──ああ……。
 専門的には、「つなぎ」と言うんだけどね、このつなぎが難しい。プロとアマチュアの分かれ目です。
 シナリオを書く人には、まずそのことを理解してほしい。その上でのアドバイス──。
◆イベントを絞り込め
 手抜きに見えない印象的な場面を作るためには、絞り込むことです。
 絶対ここになきゃいけない! という場所でイベントCGを出すことです。シナリオを書いていると、頭にヴィジュアルが浮かんでしまうので、ついついイベントCGを濫造しがちになるのですが、そのままやっちゃうと印象の薄いものが増えてしまいます。一旦できあがってから思い切って数を絞り込んで下さい。
 絞り込みの作業はきついですが、その分、よくなります。どうでもいいところにイベントCGがあって、ここぞというところにないと、なんだよということにユーザーさんはなります。
 ──ぼくちんのお腹も絞り込めば……ムフ。


エッチシーンで画面と文章がばらばらにならない方法

 まず覚悟して下さい。
 どうあがこうと、ばらばらになります。厳密に言えば、絶対ばらばらになるのです。
 ──どうして?
 エッチシーンは一連のシークエンス、つながりから成り立っているのよ。そのすべてを文章と呼応させるためには、7、8枚のCGが必要ということになってしまう。
 ──そんなに使えないってことか。
 そう。
 だから、絶対に文章と画面との乖離は起こるものとあきらめて下さい。
 その上でのお話です。
◆フェードアウトを入れる
 ──ありがちな方法。
 ありがちだが、有効だ。
 エッチシーンに入る前に、フェードアウトを入れて、黒画面か白画面の時に、少し文章を書く。服を脱がせたとか彼女が恥じらったとか書く。
 それから、エッチシーンを入れる。
 ──なるほど。
 あとは、もしイベント以外のCGが作れるのなら、エッチCGを表示する前に、人物入りのイベントCG以外のCGでプロセスを表現するのもひとつの手だな。
 ──人物入りイベント以外のCG?
 モノだよ。モノを書くのだ。人じゃなくてモノな。ベッドの上に転がってたりするだろ、小物が。それ以上は自分で考えよう。
 ──ムフ、わかったぞ。クソのついたぼくちんのトランクスを見せる……
 何か言ったか。
 ──いえ。沈黙はきんたまです。
 ばきっ!
 き〜〜〜〜〜〜〜ん!
 ぐ、ぐほう……の、ノォ〜〜ッ、ロ〜〜〜〜プ!

 

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