補講第6回 「システムによって地の文の違いはあるのか?」
 

続いての質問は、なかさまです! みなさん、拍手を!
では、早速質問行ってみよう!

今回はシナリオ講座に質問したい事があり、
メールした次第です。
その質問と言いますのは、
ゲームシステムによって地の文の書き方が違ってくるのでは
ないか、ということです。
★質問1:ゲームシステムによる「地の文」の書き方の違いはあるのでしょうか?
例えば、同級生的”マップ移動式”、”ノベル形式”、
古典的アドベンチャーに多い”コマンド選択式”(「見る」「話す」などを選択するタイプ)
ではゲームシステムの違いにより、それぞれ場面表示のされ方が異なるように
思います。
マップ移動形式をとりますと、場面の変更にプレイヤーの意志が強く働き、
対してノベル形式で場面転換する際にはシナリオ側の意志が強いように思います。
コマンド選択式になりますと、動作自体をテキスト内に入れねばならないように
思います。
このように、システムの違いがあると、自ずと「地の文」の書き方は異なってくるのでは
ないでしょうか。

★質問2:選択肢表示前後のシナリオライティングでの注意点はありますか?
ギャルゲーシナリオにおいて多くの場合盛り込まねばならない
選択肢ですが、この選択肢を出す前後の文章を書く際の注意点はあるでしょうか。
ギャルゲーにおける選択肢はゲーム性を握る大切な部分である以上、
細心の注意をしなければならないように思います。
一つ書き方を間違えるとそれまでのシナリオの流れを寸断(ストーリーの流れのみならず、
ゲームのテンポとしての流れも)してしまいかねない危険な個所であるように思うのですが、
どうでしょうか。
選択肢表示までのシナリオは良かったのに、選択肢前後のモノローグのおかげで
そこだけが妙に浮いているように感じられたり、
プレイヤーに選択させるものが行動であったり状況であったりと、選択肢の統一がとれていない、、
という作品を実際見たりしますと、
選択肢周りの表現はどのようにされているのか、ということが気になってしまいました。

追記ではありますが、何かお勧めの類語辞典はありますでしょうか。
 では、早速整理しよう。
 今回の質問は、
(1) ゲームシステムによる地の文の書き方の違いは?
(2) 選択肢表示前後での注意点は?
(3) お勧めの類語辞典は?
 これですね。なかなか難題揃いだ(笑)。


ゲームシステムによって地の文の書き方は違うのか?

◆地の文とは、何ぞや
 そもそも、地の文とは何でしょう。
 単純に地の文といっても、コマンドを選んだ時に場面転換を提示するのも「地の文」でしょうし、会話の間の表情や動作を説明する言葉も「地の文」でしょうし、イベントCGの場面で台詞と台詞をつなぐ文章も「地の文」でしょう。
 仮にマップ移動式のゲームで正門前に来た場合を考えても、
・「正門前に来たぞ」
・「おれは正門前にやってきた」
・「生徒が正門に集まっていた。見慣れた朝の風景だ」
・「──正門前」
・「ここはおれが通う学校の正門だ」
 のようにいろんな表現の仕方があります。システムによって変わるのでしょうか?

 システムによる差異を気にすると、かえってそれよりもっと大切なことを見失います。形から入りすぎない方がいいと思いますよ。


選択肢表示前後での注意点

◆選択肢が登場する必然性を
 選択肢が登場する必然性を用意すること。
 それが、選択肢を表示する時に、前段階で注意することだと思います。とってつけたような選択肢は、やはりよろしくないでしょう。
 選択肢に対して違和感を感じるのは、その選択肢を選ぶ必然性をユーザーが感じられない時です。そうならないようにするためには、やはり必然性を出すことでしょう。たとえばの話ですが、別にそこで《壁を叩く》必要もないのに壁を叩くかどうかの選択をさせて、しかも実は叩くとハッピーエンド、叩かないとバッドエンドなんて展開を用意してしまうと、ユーザーはストレスを感じます。
 選択肢に必然性を出すためには、選択肢が必要となる状況を作り出すことが先決です。そのためには、うまく流れを誘導しなければなりません。誘導するためには、前もってちょっとした伏線を張っておくことが必要でしょう。
 ゲームのシナリオは、ただお話書くだけの行為ではありません。ゲームというエンタテインメントは、もっとユーザーのストレスや快感を計算しなければならないジャンルです。そこがゲームのシナリオを書く面倒臭さでもあり、また醍醐味でもあります。危険という捉え方をするのではなく、選択肢が生きるようにお話を運んでいくように考えることが大切です。


類語辞典よりも、頻繁に国語辞典で意味を確かめよう

◆類語辞典よりも、同音同訓異字辞典を
 類語辞典は、基本的にあまり使いません。
 持っていますが、普通の文章を書く時には使えても、物語を書く時にはあまり役に立たないようです。
 それよりも、同音同訓異字辞典の方が参考になります。文章に携わる者として、「変える」「代える」「替える」などの書き分けには注意を払うべきでしょう。
 個人的には、柏書房の『同音同訓異字辞典』と角川書店の『漢字の用法』を併用しています。

◆とにかく頻繁に国語辞典で意味を確かめよう
 また、類語辞典や同音同訓異字辞典を使うことよりも大切なことがあります。
 国語辞典を引いて意味や用法を確かめることです。知っている言葉であってもそうです。いな、知っている言葉ならなおさらです。というのも、あやふやな意味で捉えていたり、意味を勘違いしていたりすることがあるからです。久美沙織さんも、たとえば恐怖にふるえている時に武者震いを使ってしまって校正の方に指摘されてはっとした、ということを『新人賞の獲り方おしえます』のなかで述べられています。
 文章に携わる者として、とにかく国語辞典は頻繁に引いて意味を確かめること。言葉を愛さぬ者、言葉に注意を払わぬ者に、シナリオライターになる資格はありません。

 

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