引き続き、輝龍さんの投稿作品を見ていこう。
添削実例〜つづき
【エミリー】「ハーイ。相変わらず、オツキアイしてるわね。」
■■■GE001 エミリー制服(背景CGに重ね処理)<咲美と並べて表示>
【咲美】「あ、エミリー。おはよ。」
【エミリー】「モーニン、咲美。それにヨーヘイも」
【洋平】「あぁ、おはよう。」
【エミリー】「朝からオツキアイとは2人、仲イイネ。」
【咲美】「エミリー、この場合は”オツキアイ”じゃなくて、”ドツキアイ”なんだけど...」
【エミリー】「What?ドツキ?...ウ_ン、ニホンゴ、ムズカシね。そだ、咲美。さきのオシイネ。」
【咲美】「さっきの?」
【エミリー】「Yeah、重心低くして、コウネ!」
●●●SE002 殴る音2(ドガッ!)
【洋平】「ぐはっ!」
【咲美】「あっ!」
【エミリー】「で、姿勢崩したトコ、素早くキメるね。」
●●●SE003 折る音1(ゴキッ)
【洋平】「うぎゃっ!痛い痛い痛い。」(思わず、床にひれ伏す洋平)
【エミリー】「オーライ?咲美。」
【咲美】「ちょ、ちょっと、エミリー。」
【洋平】「エミリー、ギブアップ!ギブアップ!ギブ...あっ!」
【エミリー】「?」
■■■GE100 エミリー スカートの中からパンティ(レースの赤)が見える(イベントCG)
【洋平】(こ、これは...痛いけど、良い眺め...)
【エミリー】「ヨーヘイ、ナニ見てる。...そいう悪い子にはゴホービね。」
●●●SE004 折る音2(メキッ)
【洋平】「うぎゃー!」
【咲美】「エミリー。それ、”ご褒美”じゃなくて、”お仕置き”。」
【エミリー】「Really?」
【洋平】(結局、HRが始まるまでエミリーは外してくれなかった...ガクッ)
◆エミリーの性格は?
では、まずキャラクターの性格を確認。
2.エミリー・マークライツ
10歳の時に母親を亡くしており、現在父親と2人暮らし。
父親(軍人)の配属で日本(森川学園)にやってくる。不慣れな日本語を話す。
父親から格闘術のイロハを教わっており、たまに主人公を実験台にする。(悪気なし)
[性格]陽気なアメリカン。性については開放的(非処女)。
[容姿]170cm、54kg B:90(Fカップ)W:54 H:92。サングラスを髪にかけている。
[服装]冬の私服:上はジャガー柄のベロアのカットソー。下はマイクロミニスカート。ロングブーツと網タイツ。
夏の私服:上はビキニまたはビスチェ。下はミニのタイトスカート。
全体的には、咲美よりよく出来てる感じだな。オープンなアメリカン姉ちゃんってことで、ステレオタイプなんだが、ステレオタイプと思い切り割りきったがゆえに、気持ちのいいものになっている。かなりいい出来と言ってよい。
――おお、珍しくお褒めの言葉。
当たり前だ。よいから褒めておるのだ。
ただ、シーンとしての甘さというか、ぬるさがまだある。もっとシャープにできるぞ。
一つ一つ、内容を見ていこう。
【エミリー】「ハーイ。相変わらず、オツキアイしてるわね。」
■■■GE001 エミリー制服(背景CGに重ね処理)<咲美と並べて表示>
【咲美】「あ、エミリー。おはよ。」
【エミリー】「モーニン、咲美。それにヨーヘイも」
【洋平】「あぁ、おはよう。」
ここ、おかしいぞ。
喧嘩やらかしてる最中に人が来ていきなり「おはよ」としらふに戻るか?
――戻らない。
余韻、残ってるよな。朝だから挨拶するという、自動的なパターンにはまってしまっている。自動的に書いてしまうと、せっかくのキャラクターが死んでしまうのだ。
――ボクチンも殴られすぎると死んでしまう。
なんか言ったか。
――なにも。
そうか。
挨拶のシーンはたらたらしないほうがいいな。オツキアイも出すのなら、あとでパンチ利かせて出したほうがいい。
◆会話の質と量をコントロールしよう
【エミリー】「グッモーニン♪」
■■■GE001 エミリー制服(背景CGに重ね処理)<咲美と並べて表示>
【洋平】「げ」
【咲美】「あ、エミリー」
こうした方が中身がすっきりする。
始めの頃って、会話はついつい饒舌、無駄になりがちなのだ。
できるだけ会話は無駄を少なくすること。前回も話をしたが、会話を書くときに2つ気をつけなければならないことがある。
1つ、質をコントロールすること。
2つ、量をコントロールすること。
人が違えば、しゃべる量も違う。話し方も違う。それをしっかり描き分けること。全然しゃべらない子もいるからな。
――うんうん。ボクチンなんか、寡黙だもんなあ。
ばきっ!
ははは、何か聞こえたかな!
――な、なにも言ってません……グスン。
今回の場合、一番寡黙なのはだれだ。
――咲美かな。
一番饒舌なのは。
――エミリー。
よし。そのことを忘れずに行こう。
【エミリー】「朝からオツキアイとは2人、仲イイネ。」
【咲美】「エミリー、この場合は”オツキアイ”じゃなくて、”ドツキアイ”なんだけど...」
少しぴんと来ないな。このギャグをいかしたいのなら、エミリーの台詞をもう少し長くしたほうがいいな。
【エミリー】「ナイスパンチ、咲美。ヨーヘイ、スウェーバックしなきゃダメね。オツキアイするなら、もっと広い場所でやらなきゃアブナイね」
【咲美】「エミリー、それ言うんなら”ドツキアイ”なんだけど……」
――スウェーバックって?
上体をそらすだけで相手のパンチを避けることだ。ステップで避ける場合は、ステップバックという。
◆話題転換は接続詞でするな!
【エミリー】「What?ドツキ?...ウ_ン、ニホンゴ、ムズカシね。そだ、咲美。さきのオシイネ。」
いかんな、ここ。
――なんか、話に無理やり戻してるのが見えてるもんね。
「そうだ」なんて言葉は、普通はなかなか使わないのだ。使うときというのは、バイバイしかけたときにいきなり思い出したときだったりする。
たとえば。
「ほな、帰るわ」
「おう」
「あ、そや」
「なに」
「文彦、この間のこと、なんか言うとった?」
――うんうん。
「そうだ」なんて言葉は、唐突に使うともう話題転換をしたがってるのが見え見えなのだ。100%わざとらしい。こういう言葉は使ってはならん。会話を書く力が落ちる。
【エミリー】「What? ドツキ? Oh,I remember! ドツキアウほど仲がいいっていうね」
【咲美】「(少し呆れて)それは喧嘩するほど」
【エミリー】「喧嘩? 細かいこと気にシナイ。咲美、ファイティングポーズ! エミリーがもっといいパンチの打ち方、教えるね」
【咲美】「いいよ、もう」
【エミリー】「No,No。あきらめたらダメね。Look。拳、ちゃんと握るね。相手、よく見る。And、重心低くして、コウネ!」
話題を戻すときや、転換するときは、間を使う。あるいはいきなりやる。そのほうが普通の会話っぽくなる。
――接続詞使ったらだめなの? 「ところで」とか「それに」とか。
ところで、なんてめったに使わないぞ。「それに」だってそうだ。
◆ゲームは映画にあらず、止めCGで出来ることを意識しよう
●●●SE002 殴る音2(ドガッ!)
【洋平】「ぐはっ!」
【咲美】「あっ!」
【エミリー】「で、姿勢崩したトコ、素早くキメるね。」
●●●SE003 折る音1(ゴキッ)
【洋平】「うぎゃっ!痛い痛い痛い。」(思わず、床にひれ伏す洋平)
【エミリー】「オーライ?咲美。」
ぐはははは! ここいい! 絶対いい!
――ぼくちん、嫌い。だれかに似てるんだもん。
ばきっ!
わははは、面白いな! な! な! な!
ばきっ! どがっ! ばきっ!
――ぐ、ぐはあ……はい……おもしろいですぅ……うげえ……。
だが、ひとつだけ無理な部分があるぞ。「床にひれ伏す」。このシーン、実際はどうするつもりだ。
――ぐっ。
映画ではないからな。アニメーションはできん。
――ううん。
止めCGで出来ることとできないことに気をつけるように。
あと。
最後はオーライではなくてオーケイだと思うぞ。
【咲美】「ちょ、ちょっと、エミリー。」
この台詞、美紀っぽくないか。
――言われてみれば。
おれならこうするな。
【咲美】「それって、ボクシングじゃないような……」
◆派手な行動でキャラを立てよう
【洋平】「エミリー、ギブアップ!ギブアップ!ギブ...あっ!」
【エミリー】「?」
少し早くないか、シーンの移り変わりが。
――そうかな。
止めCGなんだから、洋平がなにをしているのか見せてやったほうがいいな。映画を作っているのとは違うぞ。もう少しシーンを盛りあげよう。
【洋平】「エミリー、ギブアップ! ギブアップ! ギブ……骨が折れる……ンッ、ンッンッ!」
【エミリー】「ワ〜オ、ヨーヘイ、凄いパワー。Meから逃げるつもり? エミリー、負けないヨ。――んっ、んっ(と踏ん張る)……Oh!」
【洋平】「どわっ!」
●●●SE005 倒れる音(ドサッ)
――効果音つけたんだ。
そのほうがよいであろう。面白みが増す。
派手なキャラクターは派手に動かしてやったほうがキャラが立つ。全員なまぬるいとキャラクターが埋没して印象に残らなくなってしまう。それでは最悪だ。
ゲームはキャラクターが命。しっかりキャラクターを立てよう。
■■■GE100 エミリー スカートの中からパンティ(レースの赤)が見える(イベントCG)
【洋平】(こ、これは...痛いけど、良い眺め...)
【エミリー】「ヨーヘイ、ナニ見てる。...そいう悪い子にはゴホービね。」
●●●SE004 折る音2(メキッ)
【洋平】「うぎゃー!」
――いやな予感。
わはははは、ここ面白い! どうだ、面白いであろう!
ばきっ! どがっ!
――うぎゃっ、ぐへっ……やっぱり予感が当たったあ……。
【咲美】「エミリー。それ、”ご褒美”じゃなくて、”お仕置き”。」
なんか、咲美落ち着いておるな。
――そうだね。
慌てさせてもよいのではないか?
【咲美】「エミリー、ストップ! それじゃあ、お仕置きだって!」
◆個性とは、ある事件への反応の違い
全体的に見て、シーンにはめりはりをつけたほうがよいな。少し淡々としておる。
――そうだね。なんか、おもしろいんだけど、もう少しインパクトないね。っていうか、インパクト減ってるね。
うむ。淡々としたシーンならばよいが、エミリーは、ここでは風雲児、トラブルメーカーみたいなものだ。ならば、徹底的にめちゃめちゃにしたほうがよい。そのほうがキャラクターも立つ。ついでに、エミリーの行動に対してだれがどう反応するかでキャラクターの個性を描けるというものだ。
個性というものは、ある事件に対する反応のことを言うのだ。
たとえば、エミリーが洋平の首を締めたとする。
そのとき、美紀ならどうするか? 咲美ならどうするか?
この、反応の違いが、個性なのだ。それがキャラクターの違いなのだ。
――なるほど。
【エミリー】「Really?」
この台詞、もったいないな。
大暴れしておるわけだろ? レスリング技かけて。
――うん。
それで、この冷静さ。「ほんと?」って、もったいない。ここはコミカルなシーンなんだから、もっとコミカルに行こうぜ。
――シーンが中途半端なんだよね。ところどころ。
そうだ。そのせいでぬるくなっている。徹底的にいこうぜ。
シーンははっきり色付けしたほうがいい。悲しいなら悲しい、コミカルならコミカルに徹したほうがいい。
【エミリー】「オシオキ? Oh、オシオキ知ってるネ。ヒッサツ、オシオキニン! 町の人に代わって、エミリーがオシオキするネ。――(声、仕事人入ってます)恨み、ハラさせてもらいま〜す。覚悟!」
●●●SE004 折る音2(メキッ)
【洋平】「ぎゃああああああああああああああ!」
◆同じシーンを別のキャラで演じさせてみよう
では、次に行こう。ラストだな。
【洋平】(結局、HRが始まるまでエミリーは外してくれなかった...ガクッ)
――なんか変な収束の仕方だね。
うむ。ここ、フェードアウトかけて、場面転換したほうがいいな。
黒へフェードアウト(2秒程度)
●●●G040 フェードイン(2秒程度)
【洋平】おお、いて。まだ骨がおかしいぞお。ぐはあ……エミリーのやつ、人を実験台にしやがって。
【洋平】くそお……いてて。ほんとに骨折れたんじゃないだろうな。
■■■GS001 咲美制服(背景CGに重ね処理)
【咲美】「生きてるか」
【洋平】「死んでるわけないだろ……いてて……絶対骨折れたぞ」
【咲美】「洋平の骨がそう簡単に折れるか」
【洋平】「おれはか弱い少年なのだ」
【咲美】「どこがだよ。だいたいな、骨折れてたらもっと痛いんだよ」
――なるほど。
もし、咲美の代わりに美紀が来たらどうする?
――うぐ。
恐らく、こうなるな。
【美紀】「またエミリーに技かけられたんだって?」
【洋平】「ああ、ひどい目に遭ったよ。エミリーのやつ、手加減ってものを知らないんだから。いてて……」
【美紀】「だいじょうぶ?」
【洋平】「さあ。骨折れたかも」
【美紀】「お医者さん行ったほうがいいよ。保健室、ついていこうか」
【洋平】「いらねえよ」
【美紀】「そう? 気をつけてよ」
【洋平】「突然やってくる災難に注意なんかできるか」
【美紀】「そりゃそうだけど。――洋平も柔道やればいいのに」
【洋平】「あんな汗くさいスポーツできるか」
【美紀】「でも、面白いよ」
【洋平】「おれは面白くない。おれ、汗かいてねじりハチマキ締めてっていうのいやなの」
――なるほど。
同じシーンでも、キャラクターが違えば声のかけかたも、心配の仕方も違うのだ。
1つのシーンを別キャラで演じさせてみると、キャラクターを描き分ける訓練になるぞ。
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