第16回 「書きいづる悩み」
 

 ――う〜ん。
 どうした。
 ――う〜ん。
 ウンコか。
 ――違うよ。う〜ん。
 金欠で首が回らなくなったか。
 ――それ、自分のくせに。
 うぐっ。
 ――あ、図星。
 むかっ!
 人には言っていけないことがある〜〜〜〜っ!
バッキィ〜〜〜〜ッ!
 ――ぐはあっ……なぜ機動戦士Zガンダム……。
 おや、こんなところにタンコブが。どうしたのだ。
 ――自分が殴ったくせに。
 そうかそうか、かわいそうになあ。で、本当はどうしたのだ。
 ――50KBまで書いたんだけど、続きが書けないんだよ。

◆詰まったときの常套手段
 ――当たり前だよう。ボクチンだってデリケートなんだ。
 ほう、おまえがデリケートとはのう。ナマコも悩むのかのう。
 ――しどい。ボクチンはグアムに住んじゃいないぞ。
 今度踏んづけてやる。
 詰まったときには、まず最初から読み直してみるというのが手だな。
 ――最初から?
 そう。おれの場合、まだ50KBも書いていない頃だと、毎日シナリオを書き始める前に冒頭の場面からず〜〜っと読み直していくんだ。そうして流れに乗るんだ。
 ――ふうん。なるほどね。でも、うまく行かなかったときは。
 音楽を聴いてみる。意外と昼間の雑音って邪魔なのな。会社にいたりすると、別の人の雑音やら交通の音やら生活音やらが邪魔になって集中できなかったりする。夜のほうが進むって言われるのは、余計な雑音や生活音がないことと、光量の変化がないことが関係しているのだよ。
 ――なるほど。
 『あめいろの季節』を書いているときは、日中なのに雨戸閉ざしてたもんな、おれ。
 ――単に危ない人だ。ま、いつも危ないから変わらないか。
 ぽきぽきぽき!
人には言っていけないことがある〜〜〜〜っ!
バッキィ〜〜〜〜ッ!
 ――ぐはあ……またまた同じギャグを………………。

◆何で行き詰まっているのか、どこで行き詰まっているのか、紙に書き出す
 ――問題点を書き出す?
 そう。コンピューター上ではなくて、ペーパーにひとつひとつ、今問題になっていることを書き出すんだよ。
 ――へ〜え。
 『プリズム・ハート』でいえば、プリンセアのシナリオを書いているときとか、カミナのシナリオを書いているときにそうしたぞ。特にカミナのシナリオを書いているときには助かったなあ。
 ――そんなもので助かるもんなの?
 自分でひとつひとつ箇条書きにすることで、意識が明晰になるんだな。どれが問題かがはっきりして、じゃあ、どうすればいいだろうって、戦略的に頭が動きやすくなるんだ。そうしないと、ただウンウン唸るだけなんだ。
 ――ボクチンもトイレに行くとよくウンウン唸ってるよ。
 そりゃ違うだろうが! この下品男!
ドガ〜〜〜〜ッ!
 ――ぎゃあああ、漏れるううううううう〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!

◆それでも書けないときは、好きな映像を見て好きな物語を読む
 食いすぎたか。
 ――違うよう。やっぱり書けないよう。
 そうか。残念だったな。
 ――なに? いきなりポンって肩に手を置いたりして。
 あきらめろ。おまえに才能がなかったってことだ。
 ――そんな悲しいこと言わないでよう。ボクチン、シナリオ書きたいよう。
 死んでも書きたいか。
 ――死んだらハーレムやりたい。
 ………………。
 ――ねえ、どうしたらいいんだよう! ぼくちん、詰まって腹が出ちゃうよ!
 好きなものを見ろ。好きな物語を読め。
 ――好きなもの?
 そう。シナリオを書く作業ってのは、言ってみりゃアウトプットだな。アウトプットするにはインプットが必要だ。インプットが足りないとアウトプットできない。こりゃ当たり前の事実。
 ――なるほど。
 詰まって詰まって仕方ないときには、自分の好きな漫画やアニメを見たり、自分の好きな小説を読むのが結構いいぞ。
 ――新しく買うのはだめ?
 自分がこよなく偏愛するものを見たり読んだりするのがいいな。おれも『プリズム・ハート』で行き詰まっているときは、寺沢武一の『コブラ』を読み直していた。
 ――ああ、ボクチンみたいなかっこいい男が出てくる話ね。
 だれがおまえみたいなかっこいいやつだ!
 ぎゅい〜〜〜〜っ!
 ――じょ、冗談ですう、ふぎゃああああ!

◆完璧に詰まったときの最高の特効薬
 最初からシナリオ読み直したか?
 ――もう20遍も読み直したよう。
 おまえの偏愛するフィクションは見たか?
 ――もう50回も『美女とデブ』は見たよう。でも、駄目なんだよう。
 おまえ、友達に相談したか?
 ――友達?
 ゲームのことがちゃんとわかる子で、お話というものがある程度わかるか、実際にお話を作ったことのある子だ。そういう友達に相談するんだよ。それが、行き詰まったときの一番の特効薬なのだ
 ――そうなの?
 シナリオは、自分の脳味噌だけで書くものではない。書けないときには他人に相談して他人の脳味噌を使え。堂々と他人の脳味噌を借りろ。おれも、『プリズム・ハート』のときは、プログラマーのDigital Cat君やなべちゃんや海里に相談しまくったぞ。メルのシナリオを書いているときも、すげえ自分で不安があって出来が中途半端だと思っていたから、港さんや大野さんやDigital Cat君に読んでもらって、3人から意見をもらった。すげえ助かったよ。
 ――へ〜え、そうなんだ。
 そう。人は自分の脳味噌だけで生きるにあらず
 出来るなら、シナリオは紙にプリントアウトして読んでもらうのがいいな。そうして積極的に感想や意見を求めるといいぞ。
 ――でも、人に見せるの恥ずかしい。
 ゲームとして発売されたらもっと多くの人に見られることになるんだぞ。見せるのが恥ずかしいのなら、なぜシナリオを書くんだ? 矛盾しとるぞ。
 ――ううん。
 いいものが出来たほうがいいのか、自分が恥ずかしくないほうがいいのか。どっちが大切なんだ。
 ――わかったよう。相談するよう。でも、それでもだめな場合は?
 まるっきり1日仕事をしない! パソコンもつけない! これが一番!

◆飯は食おう
 ――食べてるけど、どうして?
 朝起きて仕事するとするだろ? 飯抜いてると、昼からいきなりパワーダウンして駄目になっちゃうのよ。
 ――へ〜え。
 仕事の始めって、不安定だから、おれの場合あんまり飯食いたくないわけよ。飯のこと考えたくないし、早いとこあっちの世界に行きたいしよ。でも、あっちの世界に入ってシナリオ書き出したら、今度は中断したくないだろ?
 ――うん。
 飯食ったら、お腹いっぱいになって調子乱すってのが、結構ベルダ時代あったのよ。だから、あんまり食わなかったんだけど、それじゃ駄目だってことにやっと気づいたよ。
 飯食わないと、エネルギー切れてだめになるのな。
 ――ボクチン、いつももりもり食ってるよ。
 そりゃ、おまえはな。おれ、朝はあまり食えないから、カロリーメイト叩き込んでるよ(2002年現在ご飯と味噌汁に変更)。とにかく、どんな形にしろ、エネルギーを摂取するようにしたほうがいいみたいだな。
 シナリオを書くってのはすげえ集中力要求するから、めちゃめちゃエネルギー使うのよ。だから、みなさん、特に小食の人、エネルギーは取りましょう。

 

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