――ねえねえ、また書き直してみたよ。
変な液体はついておらんだろうな。
――むふふう、平気。読んでみて。
【 ボクチン 】「えへへ、ここがいいんだろ? この雌豚め」
【 美紀 】「ああ」
美紀が裸身を真紅に染めながら恥ずかしげにくねらせる。
【 美紀 】「もう……やめて……くだ……さい……」
【 ボクチン 】「何言ってやがんだ。おまえは奴隷だ。おれの奴隷だ」
【 美紀 】「そんな……」
【 ボクチン 】「言ってみろ。おれの雌豚だと言ってみろ」
【 美紀 】「いや……」
【 ボクチン 】「言え!」
【 美紀 】「わたしは……あなたの……雌豚……です……ううっ……」
【 ボクチン 】「くっくっくっ、そうだ」
◆地の文はハードポルノ+ジュニアポルノ
――どう?
なかなかうまくなったな。
ただ、地の文が少ないな。1つしかない。あと、1、2行増やした方がいい。そうすれば及第だな。
――わ〜い。
しかし。
――む?
純愛ものだったよな。
――うんうん。
ただの凌辱ものだろうが! ハードポルノするんじゃな〜〜い!
バキィ〜〜ッ!
――ぎゃあああぁぁぁ…………
市販されているゲームでも、ときどきあるのだよ。
普通の会話はきゃぴきゃぴしているのに、エッチシーンになると、いきなりおじさんのポルノ臭くなるやつが。変すぎるぞ。
――ぐう……。
概して、エロゲーのキャラはきゃぴきゃぴしている。だから、その雰囲気に合わせるために、エッチシーンの文章はハードポルノとジュニアポルノを足して割ったくらいがちょうどいいな。
◆神の視点からの「語り」を抜け! 官能の高まりはポルノ小説より抑え目に
――具体的にどうすればいいの?
文章のレベルは、ハードポルノに合わせておいて、中年向けポルノ臭を脱臭してやるのだ。あまりねっとりと書きすぎないことが一番だな。たとえばだ。
会話のシーンは、
【 大輔 】「奈々ちゃ〜〜ん!」
【 奈々 】「あ、大輔くん。どうしたの」
【 大輔 】「いっしょに帰ろうと思ってさ」
【 奈々 】「ソニプラ寄ってくけど、いい?」
なのに、エッチシーンは、
奈々は頬にかかる髪を何度となく振り払って手で押さえた。それはもう愛撫ではなく蹂躪だった。が、その凄まじいまでの玩弄の嵐の中で、奈々のボディは燃え狂い出していた。芯から官能の炎にあぶられ続けていた。
開いて立った両脚の付け根では、ハイレグがヒップまでビッショリと濡れていた。揉まれるほどに、快楽は黒いうずとなって全身にどこまでも深く打ち響いてきた。(由紀かほる『尻肉 淫ら吸着責め』93-94頁)
では、明らかに違和感がある。
描写スピード、テンポがあまりにも違いすぎる。
エッチシーンの文章は、今活躍しているポルノ作家のものから引用していたやつだ。だから、凄いうまいだろ? けど、元々の会話自体がきゃぴきゃぴしているため、救いようがないくらいミスマッチだ。
――いや〜〜ん、ミスまいっちんぐ。
マチ子先生の真似すな! 気色悪いわい!
ドガッ!
――ふぎゃっ!
エッチシーンの文章も、会話のトーンに合わせて加工してやる必要があるのだ。たとえば、
奈々はパサパサと揺れる髪を何度も手で振り払って押さえた。
ありったけの力を込めて乳房を揉みしだくたびに、奈々の巨乳が激しくひしゃげる。
【 奈々 】「あっ、あっ、やっ、大輔くんっ、あっ、ああんっ!」
凄まじい勢いでバストを揉みしぼられて、奈々は泣き叫ぶばかりだ。
開いて立った両脚の付け根は、ヒップまでびっしょりと濡れている。揉まれるのが気持ちよくてたまらないらしい。
こうして「語り」の部分を抑えてやるのだ。彼女の内部の官能の高まりを、彼女の視点、あるいは神の視点から描いてしまうとかなりオジサンぽいポルノになってしまう。
だから、神様視点の官能描写を削り取って、主人公側からの描写にしてやるのだ。それも、官能の高まりは出来るだけ軽く済ませてやる。
それだけでも、オジサン臭いのは取れるぞ。
――ううむ、なるほど。ま、ボクチンのような若者には不必要なことだな。
バキッ!
何か言ったか?
――ぐ、ぐほ……な、何も言ってましぇん……。グスン。
◆あとからまとめて書くか、つづけて書くか、それは自分のスタイル
――エッチシーンを書くときって、どう始めればいいの?
まず、そのシーンで何枚CGを使うか、確定させることだな。
ゲームのCGは限られている。小説のように無限に生産・消費できるわけではない。
だから、このシーンでは何枚使うのか、総じてこのキャラクターは何枚エッチCGを使えるのかを確認することだ。
――また枚数か……。
モノには限りがあるのだよ。
――じゃあ、今回は一人当たりエッチCGが10枚、総エッチCG枚数が40枚だったから、その範囲内に抑えないといけないってことか……。
複数回、エッチシーンを入れたいものだな。
――うん。
おれの場合、枚数の確定作業が終わったら、まず記号的に書くことから始める。
――記号的?
そうだ。エッチシーンの場所に来たら、
H100
H101
H102
とだけシナリオに書いておく。
――これ、何?
H100というのは、ある女の子のエッチCGの番号だな。3つ並んでいるということは、3つCGを使うということだ。
――これだけ?
もう少し余裕がある場合は、
H100 ;奈々の乳揉み
【 奈々 】「あ、あん、だめ、そこ」
大輔、胸を揉む
H101 ;奈々のあそこいじいじ
H102 ;奈々と合体
と書いておく。
――ホント、記号だ。漫画家さんが「ここ、家」って指定してるみたい。えらそ〜に。
やかましい。エッチシーンは時間が掛かるのだ。
あまりにあるシーンに時間をかけすぎてしまうと、流れを見失って次の場面を書けなくなってしまうことがある。エッチシーンの前後には必ずシークエンス(つながり)があるから、エッチシーンばかり書いていると、その後が続かなくなってしまうのだ。だから、おれの場合は、エッチシーンを飛ばして後を先に書いてしまう。で、シナリオがすべて完成してから全部まとめてエッチシーンを書くのだ。
――ずぼら。
生活の知恵だ!
――他のライターさんもそうしているのかな。
そうでもないみたいだぞ。自分のようにあとからまとめて書くのではなく、先延ばししないで書いてしまう人もいるし、最初に書いてしまう人もいる。人それぞれだ。要は自分がどのスタイルを取るかなのだ。
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